中国大陸ライトノベル調査 第1弾 「表紙&タイトルデザイン&帯」 前編

皆さんニーハオです.
7月頭の日記でも分かる通り,私はいま海外出張で北京にいます.
そろそろ帰国を迎えるということで,根気よく交渉して中国の書店における中国語訳ライトノベルについて色々と調べてきたのでコラムとして認めたいと思います.よろしくお願いします.

第一弾は,とにかく帯付きのライトノベルの表紙を撮って来ましたので一つ一つ見て行こう,という企画になります.
というより第二弾はかなーり趣味全開な内容になる予定なので実質的に第一弾が今回の調査のメインです.

それでは! 簡単な作品紹介も交えてサクサクいっちゃいましょう.

注:例によって(笑)長文注意です!





雪蟷螂 (電撃文庫)

雪蟷螂 (電撃文庫)

■雪蟷螂 (電撃文庫
言わずと知れた紅玉いづき先生による「人食い三部作」シリーズの最終章.
ある地域の部族の風習とその軋轢や人間模様を描いた昨今のライトノベルの中でも異色なストーリー展開で,ハラハラドキドキ.そして最後には「嗚呼!」と叫びたくなるようなカタルシスを得られる作品です.
こちらはもともと漢字のタイトルなのでデザインもほぼ変わらずそのまま使っていますね.
帯にある「殺人魔物語三部曲最終章」という記述が印象的.ちゃんとそこは共通してマーケティングしているのが伺えます.

 



なれる!SE 2週間でわかる?SE入門 (電撃文庫)

なれる!SE 2週間でわかる?SE入門 (電撃文庫)

なれる!SE (電撃文庫
ボンクラサラリーマンの主人公が見た目が完全にロリ美少女の敏腕SE上司にこき使われるという非常にうらやまs……けしからん状況をもって,職業の大変さや,やりがいを描く意欲作.
「なれる!」が「奋斗吧!」に変換されてますね.これは「奮闘」に相当する単語なので「奮闘する!SE」という微妙なニュアンス変更が行われていることがわかります.
SEの表記も日本より少し親切です.システムエンジニアと聞いても中学生はまだピンと来ないと思いますが,中国語訳には「系統工程師」(「系統」は中国語で「システム」です)という表記が下についているのですぐに分かりますね.

 

“文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫
いわずとしれた超名作,野村美月先生「文学少女シリーズ」の登場です.ある秘密を抱えた少年が,本を食べてしまうほど愛している一人の文学少女との出会いを通して,本にまつわる愛憎劇へとまきこまれる様を描く,学園ミステリーシリーズ.
大きなタイトルデザインの変更が見られます.日本のほうがインパクトを重視しているのに対して,中国側はサブタイトルを下の方にスッと配置してすっきりな印象です.フォントも違いますね.訳は直訳っぽいです.
帯には「このライトノベルがすごい!2009年度5冠王作品!」という文句が.日本(の限られたライトノベルファンの間)ならともかく,中国のライトノベル読者の「このラノ」認知度はどれくらいなものなのでしょうか.嗚呼,私にもっと中国語コミュ力がアレば立ち読みしている若い女の子たち(当然!)に聞いてみたかったのに…….



■ゴールデンタイム1 春にしてブラックアウト  (電撃文庫)
あの「とらドラ!」の竹宮ゆゆこ先生が,今度は「大学生」にスポットライトを当てました.
自由な時間があって,自由な行動ができて,自由な恋愛と自由な人間に関われるそんなまさに「黄金時代」を描いた青春ストーリー.いつものゆゆぽ節は健在です.ホロリ.
メインタイトルはほぼ直訳の「金色時光」.「時光」は「時代」を意味する熟語です.
ただし,サブタイトルが直訳すると「記憶を失った春」になるので若干ネタバレ気味ですかね……?
まぁ先日「千と千尋の神隠し」をテレビで見た時「ハク」の名前が「白竜」だったときはおいおいと思いましたが,言語的(表面的)なネタバレには寛容な風土なのでしょうか?といってもこの場合全然致命的じゃないからいいか…….
帯も面白いですね.いろいろな情報が載っています.「とらドラ!竹宮ゆゆこ先生新作!」とか香子との出会いのワンシーンのあらすじが書いてあったりとか.



とらドラ〈3!〉 (電撃文庫)

とらドラ〈3!〉 (電撃文庫)

とらドラ3! (電撃文庫
ということで竹宮ゆゆこ先生の代表作.「とらドラ!」です.この作品について熱く語るとガチで3時間超えするので(ニコ生で実証済み……汗)
詳細は語りませんが,とにかくライトノベルにおける青春モノのバイブル的な作品です.手放しでオススメです.
さて中国版ですが……タイトルデザインが大きく変更されていますね.「TIGER×DRAGON!」ってアンタ……笑 
しかしながら,翻訳の方の苦労が伺えるデザインで非常に興味深いのは確かです.そのすぐ下にある「虎与竜」(与は日本語でいう「と」に相当します)というタイトルではインパクトに欠けるのは確かでしょう……そう考えるとひらがな(とカタカナ)四文字タイトルはかなり翻訳者の頭を抱えさせるのでしょうね.
手乗りタイガー」の訳が「拳中老虎」で,亜美ちゃんの紹介が「双面美少女」っていうのも個人的にツボです.
亜美ちゃんかわいいよ亜美ちゃん,私が引き取るからとにかく幸せになってほしい><.



バカとテストと召喚獣 (ファミ通文庫)

バカとテストと召喚獣 (ファミ通文庫)

バカとテストと召喚獣 (ファミ通文庫
ファミ通文庫かつての2本柱が1柱,通称バカテス.試験問題と召喚というファンタジー要素をミックスした不思議な世界観ながらも,そのハイセンスがギャグと可愛らしいキャラクターたちのやりとりに思わずにやける超有名作品です.
先に紹介した「文学少女」とは違って「バカ」「テスト」「召喚獣」の配列といい,しっかり日本のスタイルに似せている印象があります.いい仕事しています.
「バカテス」といえば章の間に入る試験問題がものすごく斬新で面白い作品ですが,帯にそのやりとりをパッと載せる大胆な宣伝をしていますね.
「できれば地球の言語を使って表現してください」というツッコミが中国語で書かれるとまたシュールで面白いです.そして新鮮.



はたらく魔王さま! (電撃文庫)

はたらく魔王さま! (電撃文庫)

はたらく魔王さま!  (電撃文庫)
かなり新し目の作品も見つけたので思わず紹介.世界征服まであとすこしだった魔王が日本にやってきて,なぜかバイトをはじめるという異色な作品.しかし読んでみると存分に魅力的で,この魔王がまた面白いんですよね笑
タイトルに色々とニュアンス変更がなされているのが印象的です.まず「はたらく」のあとに「!」が挿入されています.
そして最大の変更点はその訳.「打工」は働くという意味よりも「アルバイトをする」という意味合いのほうが強いです.より作品の内容に沿ったタイトルになったんですね.
第17回電撃小説大賞銀賞作品「颯爽登場!」って書いてあってすごい銀河美少年の香りがしますね!



半分の月がのぼる空〈5〉 long long walking under the half-moon (電撃文庫)
最近何かと話題の橋本紡先生の出世作であろう切ないラブストーリー.病気で入院することになった少年が出会ったのは,唯我独尊,傍若無人の少女だった.看護婦の策略がきっかけで近づく事になった二人が次第に心を通わせ,お互いの傷を晒し合い,その二人の関係を中心にどんどん引き込まれる作品です.
タイトルを直訳すると「半月の夜空を見仰ぐ」ということになりますが,これは第一巻「半分の月がのぼる空―looking up at the half‐moon」のサブタイトルを訳したのではないかと私は推測します.
そして……この帯の超絶ネタバレというか核心的なやりかたは何ですか笑! といってもこれを見ただけでは何のことだかさっぱりわからないと思いますが…….
詳細は語りませんが,しかし半月ファンならこの帯を見ただけで(たとえ中国語でも)ホロっとくるのではないでしょうか.きっと中国の半月ファンも同様に,読み終わってしばらく何年後かにふとこの帯を見てホロっとするんじゃないかなと思います.そういう意味では上手いですね.
全体的なデザインは日本に似せて,静謐な雰囲気が出ててとてもいいですね.


後編へつづく.
(帯がついていない作品はまた別の機会に紹介します〜)