「ラノベ好き書店員大賞」トランペさんとの対談エントリ(※一部掲載)

放送枠:◆「ラノベ好き書店員大賞」トランペさんにお話を伺う枠
URL:http://live.nicovideo.jp/watch/lv87253872


今回の対談相手は,「ラノベ好き書店員大賞」の主催も行い,業界的にも注目されている書店員トランペさんです.


リココ:
こんばんは.今回はラノベ好き書店員大賞を運営していらっしゃるトランペさんをお招きしてお話を伺いました.


トランペ:
こんばんは.


リココ:
今日は直前ということなので,改めて書店員大賞の話と,ラノベ売りとしての話をしていきたいと思います.よろしくお願いします.


トランペ:
よろしくお願いします.またのんびりとやって行きましょう.とりあえず告知しますね.


ラノベ好き書店員大賞の告知.割愛します. 公式HPはこちら:http://syotenin.ranobe.net/

リココ:
もう明後日なのですね(この対談は3月29日(木)の夜に放送しています.)時間が立つのが早く感じます.まだまだ余裕があるかなと思っていました.


トランペ:
意外に余裕が無いですよ.まぁ皆さんまだまだ応募できるのでどしどし応募よろしくお願いします.


リココ:
ではまず「ラノベ好き書店員大賞」のお話を改めて伺いたいと思います.某サイトで使った言葉を引用するなら「意味合い」という言葉になるのですが,ラノベニュースオンラインや,ライトノベルサイト杯このライトノベルがすごい!大賞など,ライトノベルには色々な大賞がありますよね? 
それぞれの章には「意味合い」.それぞれのレギュレーションに性格付けがなされていると思うんですが,トランペさんのところに送られてきた作品タイトルを見るかぎり,「ラノベ好き書店員大賞」にはどのような意味合い,性格付けがなされていると思いますか?
あ,大賞タイトルのネタバレがない程度でお答えいただければと思います.


トランペ:
そーですね(迷いながら) 皆さん自分が(どれくらい読んでいるか分かりませんが)読んで,まぁ面白いと思う作品を送っていらっしゃると思いますよ.


リココ:
では他のランキング系の大賞とあまり変わらない感じなのでしょうか?


トランペ:
基本的なランキングの趣旨とは同じなのではないでしょうか.あとはそこに「応募するのが書店員」という肩書きが付与されている.基本的に他のランキングというのは幅が広いというか,「新刊」ではあるけれども「新作」ではないわけじゃないですか(このラノとかと比べて).そういう意味では年間の新作に限っているので,有名タイトルなどを排除することによって,どちらかと言うと「発掘」というものに重点が置かれていますね.


リココ:
なるほど.要はメジャー・マイナーでいうところの「マイナーより」なチューニングがなされているということでしょうか.


トランペ:
そうですね.やっぱり有名タイトルというのはどこの売り場でも出しているんですよ.それをなるべく排除するというか,(新しい作品の)発掘をメインにしたいなという気持ちが強いんですね.


リココ:
となると,今送られてきたタイトルを見るかぎり,それは成功しているということでしょうか……?


トランペ:
言いたいんですけどね,でも言えないですね笑 まぁでも中々,現時点では良い結果になりつつあるので面白いなと思っていますよ.大体応募の傾向として,1つ2つは有名所というか,話題になりそうなもの.それにプラスしてあと1作は本当にドマイナーというか.「こんなのこの人しか読まないよ!」というのが結構ありますね.


リココ:
それは楽しみですね.(2011年の新作一覧表を見ながら)こうして作品群を見てみると,結構話題になった作品も多いですよね.ビックタイトルというか.


トランペ:
でも話題になったけど,売り上げ的には? という作品も多いですね.まぁこれはたまたま私の店ではそうだったというだけかもしれませんが,別の店では売れるといいなという趣旨もあったりします.


リココ:
少し下世話なお話をしますけれどもラノベニュースオンラインさんがやったやつありますよね?

(参考:「みんなで選ぶベストライトノベル2011」投票結果発表 http://ln-news.com/archives/4692/%E3%81%BF%E3%82%93%E3%81%AA%E3%81%A7%E9%81%B8%E3%81%B6%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%8E%E3%83%992011%E6%8A%95%E7%A5%A8%E7%B5%90%E6%9E%9C%E7%99%BA%E8%A1%A8/

これは去年初めて出来たサイトで,初めてやった投票企画で1位取ったガガガ文庫やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」4巻の帯を飾りましたよね. これは断言しちゃうのもどうかと思いますが,トランペさんの「ラノベ好き書店員大賞」も上位取った作品の帯とかに載ると思いますよ.


トランペ:
それはどうなんでしょうね笑 


リココ:
視聴者の皆さんもそう思いませんか. ラノベニュースオンラインさんの「みんなで選ぶベストライトノベル2011」って公式の作家さんや出版業界が盛り上げたものではなく,私達消費者が盛り上げた企画ですよね.でもトランペさんの「ラノベ好き書店員大賞」は作家さんや書店員,編集の方や僕ら消費者も本当の意味で「皆で盛り上げている」という感じがするんですよ.これは載ると思いますよ.


トランペ:
(コメント10:「期待値ばかりが高まっていくな」を受けて?)その点は期待値ばかりが上がっていて,全く個人的に実感がわかないんですよね.最初は本当に皆様から面白そうな作品を教えてもらって,自分の売り場で何か今まで展開していないものをやれたらいいなと思っていただけなんですよ.


リココ:
でもそこは私はかなり「ラノベ好き書店員大賞」の個性付けになっているところだと思っているんですよ.「今まで本屋で展開していないものを展開していくきっかけになる」……というものは中々他の企画では直感的に解らないところだった部分があると思うんですよね.ああ,でも「このライトノベルがすごい!」ぐらい大きなものだったら「本屋で展開」というフェーズに移行するのか.


トランペ:
そうですね.このラノぐらいなら展開しますね.でもやっぱり例年票が結構"カタい"というかガチな作品ばかりになりやすい.皆知っている作品が多くなってしまう.


リココ:
そういう意味では「新作に限っている」という今回のレギュレーションがうまく機能して面白い結果になっているというわけですね.いやホントに楽しみになって来ました.どんどん期待が高まっていますよ笑


トランペ:
そうですねー笑 あまり期待値が上がっても,これで売り上げ伸びるのかという心配はありますけれども.あと,「何店舗で展開してくれるのか」というのが全く未知数なんですよね.


リココ:
そうなのですか.普通にスムーズに(参加した本屋さんは)展開してくれるものだと思っていました.裁量に任せているところも多いんですね.


トランペ:
うーん.一応実際にあった書店員さんには直に展開をお願いしています.10店舗くらいでやってくれればいいかなーと思っていますが…….


リココ:
(コメント14番:「問題は帯に載るにしても、重版や新刊発売でだろうから、タイミングはクリティカルにはならないだろうね〜」を受けて)
でも「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」もラノベニュースオンラインでの結果を踏まえてその後にタイムラグ付きで帯に載せたので,そこは心配ないのではないでしょうか.


トランペ:
そうですね.あくまで私の書店の話ですが,今回の結果から一応三ヶ月くらいは展開していくつもりですし,その間にその新刊が出れば……ですね.まぁ別にそこまで載らなくても,と思いますけどね笑


リココ:
でも載ったら第二回を開催するときにもっと盛り上がると思いますよ笑 良いスパイラルになるんじゃないかな.


トランペ:
でもやっぱりある程度付き合いがある営業さんには結果を教える予定ではあるので,この結果を発表してから1,2ヶ月でどれくらい注文が入って,売上が伸びたのかというデータを蓄積したいと考えているので,公表できるものがあれば順次公表・更新していく,予定です.


リココ:
個性付けの話をもう少し引っ張りますが,普通のランキング企画(このラノなど)はどちらかと言うと"消費者向け"のランキングだと思うんですよ.人気のある作品のほうがランキングの上位に行きやすいし,どちらかというと「人気度ランキング」という側面が少なからずありますし,消費者のためのランキングかなと思っています.
しかし「ラノベ好き書店員大賞」はそうではなく,出版社の人などに需要があるんじゃないかなと思っているんですね.なぜなら今回作品を選んでいるのは"売っている人"であって"買っている人"ではないんですね.ここはやっぱり一番大きな違いになるんじゃないでしょうか.
"売っている人"が選んでいるということは,「売っている人達がどういうものが好きなのか」というマーケティングが出来るということになると考えています.そういう意味では他のランキングとは違っている.だから出版社からの注目も高くなるのではないでしょうか.


トランペ:
そこは全く深くは考えていなかったですね.でもやっぱり出版社って商品が全く売れていなかったり,人気がなかったりしてもその力によってゴリ押しできちゃうんですよ.これ置けとか,特典つけるからどうこう,とか.結局書店の売り場,展開している店舗が多ければ多いほど売上はとれます.けれども,この企画とか本屋大賞もそうなんですが,「読者の代表」(注:恐らく書店員という意味)が選んで展開させていくことによって,ある程度面白さが保証されている,ということが大きいのかなと思っています.


リココ:
本屋大賞もやはり「読者の代表」という要素が人気の側面として大きいのですか?


トランペ:
どっちかというと「書店員」って「本に詳しい人」っていうイメージが大きいじゃないですか.まぁ実際はそうではないんですけれども笑 


リココ:
読者の代表というよりは,売り手側からの,「僕ら読者にはない視点」というのが大きいかなと個人的には思っていましたね.でも確かに「読者の代表」という感じはしますね.


トランペ:
そうですね.やっぱり「読者の代表」として「本屋さんが選んだなら面白いんじゃない?」みたいな気持ちが働くと思います.まぁ本屋大賞も大きくなりすぎて色々問題が出てきているみたいですね.この企画もまぁそこまで大きくなることもないかなと思いますが.


リココ:
いやいや,「ラノベ好き書店員大賞」もこれからどんどん大きくなっていって,そういうことが起きたりすると思いますよ笑


トランペ:
そんなことがあるといいですね.


リココ:
あるといいんですか笑


トランペ:
まぁ絶対そんなに大きくならないと思いますけどね.市場的に考えてみても…….まぁやっぱり色々考えることはありますけれどもね,妄想とか笑 やっぱりライトノベルというジャンルだったらこう,アニメイトとらのあなさんとかとコラボとかしたりして.


リココ:
(コメント17:「面白い作品と売りたい作品は違うの?」を受けて)
面白い作品と売りたい作品の違いというのはどう考えていますか?


トランペ:
結局,書店員にとっては自分が売りたい作品がそのまま面白い作品になるわけじゃないですか.でもそれが世間一般にとって面白い作品かどうかというのはイコールではない.やっぱりそういうことだと思います.


リココ:
私は書店員というものになったことが無いのでよく解らないのですが,この"売りたい"というものはどれくらい「店の貢献」ということを意識するのでしょうか.「自分のニーズ」と「店の貢献」というものは別の次元であるように感じるのですが.店が儲かるから売りたい,自分が面白いと感じたから売りたい.どちらのほうが強いものなのでしょうか?


トランペ:
うーん.やっぱりそれは売り場面積のことも考えなくてはならないですね.あとは店の方針とか…….自分で自由なことをするには,ある程度「売上の実績」を出さないといけない.そうでないと自由なことはできないと思うんですよ.そこは必ず抑えなきゃいけないので.


リココ:
なるほど.では「店への貢献」というものは土台として必要なもので,その土台の上に立って,初めて自分の好きなことが出来る,売りたい作品を売れるというわけですね.


トランペ:
そうですね.設定金額だったり前年比だったりがあって,その上に自分の売りたいものを載せていくと.


リココ:
世知辛いですね.


トランペ:
いやでも,その土台を作る作業というのもそれはそれで楽しいものですよ.後はその商品の中もだったりとか,どのくらいストックしておくとか,場所とか色々考える必要があるんです.そういった「書店員の基本スペック・スキル」は当然伸ばしていかなくてはならないし,その上でやっぱり自分の好きなものを売る.好きなものを売るのは余剰分なんですよね.本当の理想としては売りたい作品だけを売って,売上が取れればそれがベストだと思います.でも基本的な売れるものを置いていなければその分(売りたい作品を置くことは)はあからさまにロスしているわけだから,そこはちゃんとやらなくてはいけないことになりますよね.


リココ:
その話を聞くと,どちらかというと(土台となる)「店への貢献」というモチベーションの方が高いなという気がしますね.


トランペ:
僕は店のことをあまり考えていませんけれどもね.


リココ:
考えていないけれども,自分がうまく立ち回るために店への貢献を考えるということですかね.


トランペ:
後は基本的な書店員としてのプライドですね.やっぱり前年比を落としたくないとか,売上を伸ばすこと自体にも喜びを覚えているし,それが面白いなというのは感じています.いかに100%を110%,120%にしていくかというのは当然突き詰めていく,その上でさらに自分の好きなものを売っていくということですね.


リココ:
さて話題が変わりますが,昼に十文字先生が言っていたことについて.

(続く)

(注意:この対談の続きは4月1日発行の【○リココのライトノベルジャーナル「ラノじゃ!」】Vol3に収録予定です.よろしくお願いします!)

……↑こういうの一回やりたかったんだ−!

▼トランペ
ブログ「虎とラッパ」:http://trumpe3128.blog.fc2.com/
ラノベ好き書店員大賞公式HP:http://syotenin.ranobe.net/
リココ紹介:
熱血のライトノベル売り.書店でラノベ売り場を牛耳っている巷の番人である.
震災にも負けない熱いハートと「ラノベ好き書店員大賞」を主催したことで業界でも大きな注目の的になっている.
作者さんや営業さんとのパイプも厚く,その書店員スキルの高さが伺える.今後も目が離せない人物だ.