◆ライトノベルと児童文学について対談 掲載

ニコニコ生放送で対談したものを編集して書き起こすエントリ.

放送タイトル:ライトノベルと児童文学につい​て対談
放送URL:http://live.nicovideo.jp/watch/lv85403125
今回の対談相手は,大学で児童文学を勉強し,研究活動を続けていらっしゃる友うりゃさんです.
ライトノベルと児童文学について,どのような関わりがあるのか.ライトノベルも読む友うりゃさんにお話を伺いました.

リココ:みなさんこんばんは.突発的に始まった今回の対談企画.業界にその人あり!と言われた友うりゃさんにお越しいただきました.

友うりゃ:こんばんは.ハードルがさっそく上がってしまいましたけど,児童文学ばっかり書いている者です.2月の末にポプラズッコケ文学新人賞の締め切りがあったので2月はずっと書いていました.

(応募した作品の簡単な紹介:子供しか見れない夢の中で開催されるハムスターのレース,ハムワンレース.それにどんどん引き込まれる主人公……)

リココ:(作品紹介を受けて)というと努力・友情・勝利のような少年漫画的な熱い感じになることですか?

友うりゃ:でも結構中性的な感じです.少年漫画的な感じなのですが,主人公は女の子です.

リココ:主人公は女の子!それは面白そうですね.最近ライトノベルでも女性主人公は流行っている気がします.(注:個人的に) 男性向けのライトノベルでは,女性主人公には色々利点があると思っていて,「男性は当然女の子になったことはない」ので,例え不合理な行動をキャラがとってもそれを許せてしまう.完全に女の子というものを理解出来ないからこそ理不尽を許せてしまう.そして,男性として生きてきた人生経験があまり関係なくなるというのも利点かもしれません.

友うりゃ:なるほど,「比較しなくてすむ」ということですね.

リココ:そうです.(「コメ17:児童文学かぁ・・・・・・ あんまし、読まなかったなぁ(byおっさん)」を受けて)コメント17番のコメントなどがありますが,児童文学というとどのようなものがあるのでしょうか?

友うりゃ:定義みたいなものでしょうか? 例えばライトノベルの定義というのも難しい物がありますよね.児童文学にも色いろあると思うのですが,「対象,読者層が児童」ならば児童文学ですね.登場人物や主人公にかかわらず,とにかく読者を児童としたものが児童文学だと思います.

リココ:なるほど.「子供を意識して書く」 では,子供を意識して書くということにはどのような特徴があるのでしょうか?

友うりゃ:例えば「18歳未満立入禁止」という言葉がありますよね?それはどういう意味なのかを考えてみる.

リココ:えーと.個人的にはすごく子供の精神性を変えてしまうような創作があると,影響も大きいので,それはダメだろう……というイメージがありますねその言葉には.

友うりゃ:当然それもひとつだと思います.それと似たような精神が児童文学にはあって,そのことの他にも,小さい頃に本を読んだ時ってもっと物語と100%リンクしている気になってしまうのです.大人と比べて感情移入が強い.

リココ:そこは確かにそんな感じがしますね.子供は当然大人より人生経験がないので「こういうこと起きちゃうかも?」と大人より想像してしまって,結果感情移入が強くなってしまうきらいがあるのでしょう.

友うりゃ:そういう面があるから,グロテスクなものや,痛みなどをショッキングに書いてしまうと,それがダイレクトな基準になってしまう.

リココ:直接的な表現を避けるということでしょうか? (「コメ37:面白い物を読んでいないからつまらなくても気付かないとかな」を受けて)なるほどそうでしょうね.比べる対象は大事と.例えば友うりゃさんの作品で言えば,F1を知っている人と知っていない人では評価が変わってしまうかもしれない.その子が見てきた夢からも影響があるかもしれない.

友うりゃ:人生を長く生きていれば,「物語の平均」というものを持つ時がある.そして子供はその平均が偏ってしまっていることが多いんですよ.(「コメ38:ハリーポッターは児童文学? 結構グロっぽいのもあるけど」を受けて)これもよく聞かれるんですが,完全に児童文学です.児童文学とは対象が児童の創作と言ったのですが,じゃあ児童って何歳から何歳? という話があります.私は20歳を超える前というのでももう児童とみなしても良いのかなと思っている人です.つまり,大半のライトノベルは児童文学として入れても違和感はないと.

リココ:難しい話になって来ましたね.私は児童文学とライトノベルを読むと違いを感じるのですが,どう違うかは言語化しにくいところがあります.例えば児童文学は「深読みさせない」という気がします.どうでしょうか.例えば暗喩が少ないとか.全体的に見て「こういう話だったのかな?」と考えさせるものはあるにしろ,キャラクターの言動や細かいシチュエーションでは深読みはさせないイメージ.

友うりゃ:小手先のトリックはいれないということでしょうか.リココさんが描いている児童文学のイメージって「教科書的な」ものという感じだと思うんです.しかし今はその枠では収まらない作品が沢山出ています.推理モノもあれば,ライトノベルのようなものもある.それが全て「対象が子供」というものを内包して存在しているのが今の児童文学なんです.教科書的なものもあれば,そうでないものもある.

リココ:となると普通のライトノベルとは殆ど区別できないものということになりますかね.例えば角川つばさ文庫の印象が私は深くて,あそこはハルヒ涼宮ハルヒの憂鬱)やレギオス(鋼殻のレギオス)なども出している.輸入しているので凄いですね.(「コメ54番:作品は、作者の文化的背景から生じる。だから作品のジャンル分けも、その文化的背景に寄る。」を受けて)コメ54番が気になっていて,文化的背景と言っているのですが,今児童文学の文化的背景って何かあるのでしょうか.

友うりゃ:風刺的なものやそういうものも含めて,だいたいあると思います.「携帯を小道具に使う」など現代に即したものも多いです.エンターテイメント性の強いものもほんとうに多いので,繰り返しになるのですが一般書籍や他にあるものはほぼありますね.(編集注:なので文化的背景も内包している?)

リココ:なるほど.倫理的なハードルはどうでしょうか.例えばライトノベルではハーレムなど複数の女性と恋愛したりしますが,あれは社会的に見たらよくないことですよね? そこらへんはどうなのでしょうか.子供向け,といったら考えなくてはならないことのような気がします.

(MF文庫Jのかのこんの例を取り上げる 
参考:今どきの小学生が見る動画 人気1位アニメはエロコメディ : J-CASTニュース

子供って与えられる刺激に敏感で,でも12歳頃ってまだエロスにはギラギラしていないイメージがあって,かのこんのニュースは衝撃的でした.開拓されていないニーズは児童文学でもかなりありそうです.

友うりゃ:そうでしょうね.先ほど言った「ハーレム」が児童文学でできるかというのは面白い議題になると思いますよ.そもそも需要がそんなにないのかもしれないし,そうでないかもしれない.

リココ:しかしかのこんの例はその隠れた需要が潜んでいるということを示唆しているのかもしれない.面白いですね.私なんかも,小学5年生くらいには好きな女の子がいた.子供時代って色々な経験をしますからね.

友うりゃ:そうですね.恋愛要素というものは当然成立すると思います.まぁ他のことがテーマになりやすいことが多い気がしますけど.

リココ:テーマになりやすいものってあるのでしょうか? 友うりゃさんの学校の研究ゼミなどではどのようなことが議題に上がりますか?

友うりゃ:令丈ヒロ子先生の「若おかみは小学生!」をご存知でしょうか.

若おかみは小学生! 花の湯温泉ストーリー(1) (講談社青い鳥文庫)

若おかみは小学生! 花の湯温泉ストーリー(1) (講談社青い鳥文庫)

講演にいらして聞いていたのですが,今は「人との付き合い方」というテーマが子供に本当に求められているようです.それが本当に需要があるようです.

リココ:「人との付き合い方」!面白いですね.コミュニケーションがテーマになっていると.

友うりゃ:新作の「ブラックダイヤモンド」もどっしりとテーマにされています.「人付き合い」「人間関係」の話です.

ブラック・ダイヤモンド1 (フォア文庫 C241)

ブラック・ダイヤモンド1 (フォア文庫 C241)


リココ:いじめがテーマ.やはりリアリティのあるお話のほうがいいのでしょうか? 現実に自分に関係があるお話.剣と魔法のファンタジーよりは,ズッコケ三人組のような身近な事件を解決するもののほうが需要がある.

友うりゃ:ところがそう簡単にもいかないですね.子供も色々考えがあって,もちろんファンタジーが好きな子もいれば,身近なものに興味が有る子もいる.「僕は友達が少ない」のようなお話にも興味があるでしょう.

リココ:聞き覚えのあるタイトルが来ましたね.ラブコメにも当然興味があると.

友うりゃ:エンタメ界隈にもちゃんと焦点が当たっていて,児童文学コーナーの中にも「ライトノベルコーナー」というのが確立されつつあります.「若おかみは小学生!」(におけるテーマ性)も勉強になることが多いですが,言葉は悪いですが「ただ面白いだけ」ということを追求した作品も多いです.

リココ:どちらのほうが高評価なのでしょうか.メッセージ性の強いものとエンタメ性の強いもの.

友うりゃ:評価はメッセージ性の強いものが高くなるかもしれませんが,(ここで当然大事なのは)子供の評価はどうなの? ということになりますね.当たり前の話ですけど,私達の評価が高いことよりもやはり消費者の評価が高い作品が人気が出る.

リココ:なるほど確かにその通りですね.あと,個人的にライトノベルによくある「妄想猛々しい」ものも児童文学にはアリな気がします.すごいリアリティのあるものだけでなく,そういうもの,想像力をふくらませるモノも読むことが,子供の想像性に良い影響を与えてくれそうな気がしますね.

友うりゃ:まぁそれで意味がわからない!ポイ!じゃダメですけど,そこでなにか掴んできっとこういうことが起きてるんだとハマってもらえれば良いことだと思います.

(このあと次枠に続きました.ここに掲載するかどうかは未定です)


▼友うりゃ
ニコ生コミュニティー
「友うりゃ☆こみゅにてぃ」http://com.nicovideo.jp/community/co157704
リココ紹介:
ライトノベル放送局の数少ない女性生主の一人.ハイテンショントークで多くのリスナーを魅了.
最近は麻雀放送が多く,アットホームな放送にまたも多くのリスナーがメロメロにされている.
児童文学を勉強中.いつか児童文学の世界で天下を取るお方です.