『ロマンス、バイオレンス&ストロベリー・リパブリック 』 ガガガ文庫から出る逃避行ライトノベルは面白い説 その3
連載です.全4回予定.次がラスト.
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逃避行ライトノベルは良い.
日常と非日常の境界線をなぞるように進展する危機.
ヒロインと主人公の軋轢.
軋轢から浮き彫りになる二人の想い.
二人の想いから生まれる,新たなトラブル.
そして新たなトラブルから生じる,更なる……危機!
ロマンス、バイオレンス&ストロベリー・リパブリック (ガガガ文庫)
- 作者: 深見真,織田 non
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/05/18
- メディア: 文庫
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あらすじ:二大超大国が対立する、剣と魔法の大陸の特殊部隊──国防騎士団・特殊作戦群。
そこに所属する最年少兵士であるリョウトは、エルフ族の小国に潜入し、
仲間とともに貴族の少女を拉致することになる。少女の名はフランカ。
リョウトとフランカが出会い、流血と拷問の末に始まる決死の逃亡劇。やがてフランカをめぐる陰謀が明らかになり、事態は思わぬ方向へ──。
少年の成長、少女の決意。圧倒的不利な状況の中で続く死闘。残酷で純粋なファンタジーの開幕。
彼と彼女のロマンスと、暴力と、そしてストロベリー共和国の物語。
気の強い情のある女と,冷徹に仕事をこなす男.
当然ながら今作の見所は,そのタイトルにある「ロマンス」にある.
男女の逃避行にはロマンスがつきものだ.出会いや別れ,恋だの愛だので深く結びつくのが生き物の宿命.しかしこの作品,当然ながらもう一つの「バイオレンス」こそがそのロマンスを成立させるための多大な柱である.
魔法の存在するファンタジー世界だが,魔法は現代兵器のようにリアルに畫かれ,そんな中,若くして,特殊部隊のリーダーである主人公は冷静沈着に様々な任務をこなしていく.
ある日,彼が受けた任務は,隣国の重要参考人である女性を拉致,とある秘密をちらつかせた”拷問”にかけること.
全く容赦のない美女への拷問描写にビビって引く読者も多いだろう.しかしここで目を逸らしてはいけない.この「バイオレンス」こそが,ロマンスの始まりであり,スパイスなのだ.
あるとき主人公は”気づき”を得てしまう.そして情動の赴くままにヒロインを救い出し,そこから二人の逃亡劇が始まる.
二人は敵同士.しかも拷問という行為まで共有した仲だ.うまくいくはずがない.
しかし,振りかかる災難からにげる内に,不思議な感情が彼らの中に生まれるのである.
それこそまさしくバイオレンスが生んだロマンス.
天秤の片方に乗っている「ストロベリーリパブリック(共和国)」も興味深い.
随所に散りばめられた意味深とも取れる言葉の数々と,決して明るくない,かつリアルな筆致に畫かれた逃避行.
なるほどこれはラブコメディではない.確かに「ロマンス」だ,と唸らざるをえない.
残虐なバイオレンスシーンは驚くほど”王道”に沿った進行をする.
美少女ではなく美女のお姉さん.美男美女のロマンスあふれる逃避行が読みたい方に是非オススメしたい.
逃避行モノは良い.
逃避の原因にこそ,真の意味する,ロマンスがあるのだから.
読了後,風吹きすさぶ荒廃した世界の中に降り注ぐ暖かな陽光ような余韻に,少しの間だけ浸ってみてほしい.